2012/05/04

古刹



ヘタりからよみがえった午後遅く、キチュ・ラカンにお参りすることにした。
ゲデン氏は私がよみがえるとは思わず昼寝していたようで、叩き起こしたみたいで申し訳ないことであった。

言い伝えによればこの寺は、ブータン最古の639年建立である。ブータンの天下統一をなしとげた最初の王、ソンツェン・ガンポは、それまでチベット文化圏全域に力をふるっていた巨大な魔女を封じるため、魔女の108のツボに相当する場所に寺を作った。キチュ・ラカンは左足のツボにあたる。
こじんまりとしているけれども、美しく静謐さに満ちている。


傍らの木は花咲く桃と、ブータンの国の木・糸杉。




人が押し寄せたらイヤなのでパワースポットとは呼びたくないが、ここの中庭にはちょっとした奇蹟があった。




オレンジの木に年中実がなるのだ。「その季節でなくても実るのです。繰り返し、繰り返し」とゲデン氏は確たる口調で語った。
「大きな実が熟するそばから、常に小さな実が出てきます。ここはパワーあふれるマジカルな場所です」


中庭に立っているだけでも疲れが癒され、ほんのりと温まるような心持ちがした。
靴を脱いで堂内に上がった。立派な観音像がまつられていた。色鮮やかな供え物とともに。写真はない。
ゲデン氏は五体投地をして拝んでいた。まず僧侶の椅子に、続いて仏に。私は膝をつくことができず、日本式に立って手を合わせた。

そして外に出たゲデン氏は、外壁に沿って時計回りにめぐる。
設けられたマニ車を回して歩く。ひとつひとつ丁寧に。ブータン人の参拝者たちも回して歩く。



マニ車は時計回りに回す。この国ではどんなに小さなマニ車や仏塔であろうとも、時計回りという規則が厳格に守られている。内部に経文がおさめられ、胴体にマントラが書かれ、僧侶の儀式を受けて、マニ車は神聖なものとなる。




どこもかしこもマニ車。

とても小さな仏塔が。

僧坊は質素。

バターランプのためのお堂にて。信者が灯す。
今は高いバターよりもマーガリンが主流らしいが。

モクレンの花に、誰がかけ渡したものか小さな小さなルンタがひらめいていた。


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