そして「ラクシャ・マンチャム(閻魔大王の舞)」。
1時間半にわたる劇で、最も人気のある演目だという。
“死後の心得”を説いたチベットの『死者の書』がもとになっている。
“おお死者よ。怖がってはいけない。光の方へと進まなければならない・・・”
角の間に黄色い布をつけた牛面の閻魔の使い、ラクシャ・ランゴが躍り出た。
地獄の裁判官にふさわしい重いステップを踏み、一気に跳躍する。
回転しながら舞い降りて、再び跳躍する。
喇叭を吹き鳴らす者たちが現れ、楽器が次第に増えてゆく。
大太鼓、小太鼓、鐘、長大なチベットホルン。
さまざまな使いたちが軽やかに登場する。鳥、熊、豚、猿、獅子、蛇。かれらにはそれぞれ意味があるのである。
そして私は超人的な跳躍を目にした。
後ろから見ると黄色いカタマリにしか見えない。
空中で激しく伸縮するこの技には、人を惹きつける謎めいた力があった。
踊りの姿を借りた何かの呪術でもあろうか。輪になって一人一人が回り、輪自体も回る、いくつもの輪が全体を回る・・・その構造にも呪的な意味があるように思う。
つんざくような音楽。色彩の旋舞。くらくらする光と影。
旅行者は次第に自我を忘れ、自らもまたトランス状態にのぼりつめてゆく。
死者の生前の行いの善悪を審判する白い神と黒い悪魔に導かれ、巨大な主役が僧侶たちによってかつぎ出される。
閻魔大王だ。
僧侶たちは「ホーウ、ホウ」と奇声をあげながら、閻魔大王を持ち運び、広場の四隅で回転させる。そして閻魔は玉座に鎮座する。
と、いいところで昼飯の時間・・・。
適当にお昼へ行く人々。
0 件のコメント:
コメントを投稿